魔術と神話の深い関係!ルーン魔術と北欧神話について
占いの中でもシンプルでチャレンジしやすいルーン占い。ルーン占いのルーツのひとつとなったのが「ルーン魔術」です。ルーン魔術は北欧神話と深いつながりがあるもの。今回はルーン魔術と北欧神話についてご紹介します。
- 目次
01ルーン魔術とは?
占いだけでなく、ファンタジー映画やゲームなどにも登場することが多いルーン魔術。では、ルーン魔術とは一体どのようなものなのでしょうか。
1-1ルーンを用いた北欧由来の魔術
ルーン魔術とは、簡単に言えばルーンを用いた北欧由来の魔術ということになります。
ルーン魔術の特徴は、「ルーン文字」を刻むことで魔術的な神秘を発揮すること。
ルーン文字は古代ヨーロッパで使われていた文字ですが、文字のひとつひとつには異なる意味や象徴するものがあり、それらの性質を用いて神秘的な力をもたらすものと考えられています。
1-2アクセサリーなどに文字を刻むことも
ルーン魔術というと、非常に難しいものだと考えることもありますが、実は手軽に用いられることもあります。
たとえばアクセサリーにデザインとしてルーン文字が用いられることもありますが、これはもともと護符としての役割を期待したもの。さらにルーン文字はいくつかの物を組み合わせたり、複雑な模様にすることでより強い力を発揮するものと考えられています。デザインのルールは決まっていないため、気づかないうちにルーン文字の用いられたファッションアイテムを使用しているといったことがあるかもしれません。
02ルーンの北欧神話
ルーン文字はもともとゲルマン民族が使用していた文字。ヨーロッパの広い地域に広がり、一千年以上の歴史を誇っていました。実はルーン文字は現在のアルファベットにも大きな影響を与えた存在。
そんなルーン文字は、日常生活はもちろん、まじないや武器、石碑などに多く用いられました。
2-1ルーン文字と北欧神話
ルーン文字の誕生は北欧の神話と大きな関わりを持っています。
ルーン文字を作りだしたと言われるのが、北欧神話では「神々の王」と言われたオーディン。北欧神話では最高の存在と言われるオーディンですが、最初から強い力を持っていたわけではありませんでした。
世界のあらゆる知恵を手に入れたいと考えたオーディンは、自らをいえにえにすることで強い力を持ったルーン文字を手に入れたと言われています。ルーン文字を学んだオーディンは、あらゆる呪術を扱えるようになり、やがて神々の王と呼ばれる存在になっていきます。
その後、ルーン文字は、「ヘイムダル」という神によって人間にもたらされたと言われています。ヘイムダルは千里眼と鋭い耳を持った神で、神の国と人間の国の境目である虹の橋で見張り番を行っていました。
そんなヘイムダルが人間の国を旅しているとき、ある夫婦の家に宿泊します。後日、ヘイムダルは夫婦の間に生まれた子どもにルーン文字を与え、それがやがて人間の国にも広がっていきます。
北欧神話では、これがルーン文字の起源と言われています。
このようにルーン文字はもともと神の世界の言葉で、様々な不思議な力を秘めているとされていましたが、それが人間の国に伝わり、魔法の神秘的な力を発揮するものと考えられるようになりました。
さらにルーン文字の神秘的な力を求めたのが戦士たち。
オーディンはもともと北欧神話において戦いの神様でもありましたが、ルーン文字の力によって絶対的な力を手に入れるようになりました。
そのため、当時の戦士たちによって、信仰の対象として崇拝されていた存在。やがて戦士たちはオーディンが愛用の槍の穂先にルーン文字を刻んでいたことにちなんで、自分たちの武器にもルーン文字を書き入れるようになっていきます。
さらにオーディンの教えによれば、ルーン文字は正しい場所に正しい方法で刻むことで絶大な効果を発揮するとされていました。
ルーン文字は文章ではなく、一文字だけでも強い力を発揮する存在。この考え方は受け継がれ、その後は願い事や占いを行うときにも、ルーン文字を一文字だけ使用するというルーン占いの基本につながっていきます。
このようにルーン文字は非常に古い歴史を持っていますが、紀元後100年ごろにローマの歴史家であるタキトゥスが記した歴史書「ゲルマニア」には、ゲルマン人が占いをする場合にルーン文字を使用する方法が記されています。
この「ゲルマニア」の記述が、世界最古のルーン占いの記録であるとも言われています。
2-2ルーンの効果を得るための正式な手順
ルーン魔術では、正しい効果を得るためには、きちんとした手順で行うことが重要とされています。その手順は八つのステップに分かれています。
最初のステップが「刻印」。ルーン文字の力を得るためには、ルーン文字を何かに刻印して魔力を込める必要があります。
次に「解読」。これはルーン文字の知識や、どのような力を持っているかルーンとその魔力の知識を得て理解するということ。
三つ目のステップは、刻まれたルーンを染める染料と、その意味を理解する「染色」。実はルーン文字にはそれぞれ固有の色があり、文字と色との組み合わせは非常に重要な存在とされています。
四つ目のステップは「施行」。これは正しい魔力を得て、それを実際に行うための条件と方法を理解することを指しています。
五つ目のステップとされているのが「祈願」。これはルーンを司る神々に対する祈りのこと。ただ単に自分の願いを伝えるだけでなく、正しく祈ることが重視されています。
六つ目のステップは「供養」ルーンを司る神々へ生贄を捧げることを意味しています。七つ目のステップとなるのが「送葬」。これは生贄の魂を神へと送る儀式です。
最後のステップとなるのが「破壊」。今あるルーンを破壊し、安全に処理したり無力化する方法を指しています。
これらの八つの要素を満たすことが、正しいルーン魔術の効果を得るための方法とされています。
ただし、現在ではこれらの要素を満たすことができる人々は少なく、ルーン文字はシンボルや占い、護符などに使われることがほとんどだと言われています。
03ルーン文字とケルト神話
このように、ルーン文字と北欧神話は密接な結びつきがあります。
ここで注意したいのが、北欧神話とケルト神話との違い。日本の場合、北欧神話とケルト神話は混同されることがありますが、実際には別の存在です。
3-1ケルト人とケルト神話
ケルト人は、現在のイギリスの民族として知られていますが、歴史的には中央アジアからヨーロッパに移動してきた人々とされています。ケルト人は馬に乗る文化や鉄器などをヨーロッパにもたらした存在で、古代ローマ人からはガリア人と呼ばれていました。
このケルト人は紀元前400年ごろにはフランスを中心とした中部ヨーロッパに広く分布していたと言われています。
ケルト人は独自の宗教観を持っていましたが、その中でも重要なのが樹木崇拝。ケルト人の時代のヨーロッパはほとんどの場所が森林に覆われていました。森林は建物の材料や燃料にもなる薪、木の実を始めとする食料をもたらしてくれる場所。つまり、ケルト人にとって森林は非常に重要な存在でした。そのため、ケルト人の中には森林を信仰の対象とする文化が生まれていきます。ケルト人の中でも宗教的な仕事を司る人々はドルイドと呼ばれ、霊魂や精霊など、人の目には見えない存在と交流を行うことができる人々とされていましたが、このドルイドという言葉も、本来は「樫の木の賢者」という言葉から生まれたものです。
ドルイドは神官や魔術師としての役割を果たしていましたが、「ドルイドの教えることは文字にしてはいけない」というルールがあり、ケルト人は文字という文化を持っていませんでした。
しかし、文化が発達すると同時に文字の必要性は増していくもの。当初は、ギリシア語など近隣の民族の言葉を使用していましたが、やがてアイルランドのケルト人によって「オガム文字」が産みだされます。
オガム文字はルーン文字と同様、日常生活だけでなく、呪術や魔術にも用いられるようになります。また、オガム文字の大きな特徴が、ひとつの文字がひとつの樹木を表しているということ。すでに述べたように、ケルト人は森林を神聖なものとしてとらえていた人々ですが、その思想は文字にも現れています。
やがてラテン語が広まると、オガム文字もルーン文字も使われなくなりますが、現在では魔術的な意味合いの強い文字として知られています。
3-2ゲルマン人とルーン文字
一方、ルーン文字はゲルマン人によって使われていた文字のこと。ゲルマン人は、ヨーロッパの中央あたりに生活していた民族のことで、古代ローマ人が「ゲルマニア」と呼んだ土地に暮らす人々として「ゲルマン人」と名付けられるようになりました。
このゲルマン人が使用していたのがルーン文字。ルーン文字はもともと東ゲルマン語源の「ゴート語」という言語で秘密を表す「ルナ」という言葉が語源となっているとも言われ、ゲルマン民族の言葉の表記に用いられていました。やがて、ルーン文字はゲルマン民族とともに広い範囲で使用されるようになります。
先ほど説明したように、神話によればルーン文字は北欧神話の最高神であるオーディンが自分をいけにえにすることによって手に入れた文字とされていますが、ヨーロッパや北欧を中心に、十三世紀ごろまで使用されたと言われています。
ルーン文字もラテン語の普及によって次第に使われることが少なくなっていきますが、代わりにルーン文字の持っている神秘性や魔術性に注目が集まり、文字としてではなく、魔術のために用いられることが増えていきます。
04まとめ
二十五種類のルーン文字によって様々なインスピレーションやアドバイスを得ることができるルーン占いは現在でも人気の高い占術です。興味のある方は、さらにくわしい知識を学んでみてはいかがでしょうか。
1-1ルーンを用いた北欧由来の魔術
ルーン魔術とは、簡単に言えばルーンを用いた北欧由来の魔術ということになります。
ルーン魔術の特徴は、「ルーン文字」を刻むことで魔術的な神秘を発揮すること。
ルーン文字は古代ヨーロッパで使われていた文字ですが、文字のひとつひとつには異なる意味や象徴するものがあり、それらの性質を用いて神秘的な力をもたらすものと考えられています。
1-2アクセサリーなどに文字を刻むことも
ルーン魔術というと、非常に難しいものだと考えることもありますが、実は手軽に用いられることもあります。
たとえばアクセサリーにデザインとしてルーン文字が用いられることもありますが、これはもともと護符としての役割を期待したもの。さらにルーン文字はいくつかの物を組み合わせたり、複雑な模様にすることでより強い力を発揮するものと考えられています。デザインのルールは決まっていないため、気づかないうちにルーン文字の用いられたファッションアイテムを使用しているといったことがあるかもしれません。
そんなルーン文字は、日常生活はもちろん、まじないや武器、石碑などに多く用いられました。
2-1ルーン文字と北欧神話
ルーン文字の誕生は北欧の神話と大きな関わりを持っています。
ルーン文字を作りだしたと言われるのが、北欧神話では「神々の王」と言われたオーディン。北欧神話では最高の存在と言われるオーディンですが、最初から強い力を持っていたわけではありませんでした。
世界のあらゆる知恵を手に入れたいと考えたオーディンは、自らをいえにえにすることで強い力を持ったルーン文字を手に入れたと言われています。ルーン文字を学んだオーディンは、あらゆる呪術を扱えるようになり、やがて神々の王と呼ばれる存在になっていきます。
その後、ルーン文字は、「ヘイムダル」という神によって人間にもたらされたと言われています。ヘイムダルは千里眼と鋭い耳を持った神で、神の国と人間の国の境目である虹の橋で見張り番を行っていました。
そんなヘイムダルが人間の国を旅しているとき、ある夫婦の家に宿泊します。後日、ヘイムダルは夫婦の間に生まれた子どもにルーン文字を与え、それがやがて人間の国にも広がっていきます。
北欧神話では、これがルーン文字の起源と言われています。
このようにルーン文字はもともと神の世界の言葉で、様々な不思議な力を秘めているとされていましたが、それが人間の国に伝わり、魔法の神秘的な力を発揮するものと考えられるようになりました。
さらにルーン文字の神秘的な力を求めたのが戦士たち。
オーディンはもともと北欧神話において戦いの神様でもありましたが、ルーン文字の力によって絶対的な力を手に入れるようになりました。
そのため、当時の戦士たちによって、信仰の対象として崇拝されていた存在。やがて戦士たちはオーディンが愛用の槍の穂先にルーン文字を刻んでいたことにちなんで、自分たちの武器にもルーン文字を書き入れるようになっていきます。
さらにオーディンの教えによれば、ルーン文字は正しい場所に正しい方法で刻むことで絶大な効果を発揮するとされていました。
ルーン文字は文章ではなく、一文字だけでも強い力を発揮する存在。この考え方は受け継がれ、その後は願い事や占いを行うときにも、ルーン文字を一文字だけ使用するというルーン占いの基本につながっていきます。
このようにルーン文字は非常に古い歴史を持っていますが、紀元後100年ごろにローマの歴史家であるタキトゥスが記した歴史書「ゲルマニア」には、ゲルマン人が占いをする場合にルーン文字を使用する方法が記されています。
この「ゲルマニア」の記述が、世界最古のルーン占いの記録であるとも言われています。
2-2ルーンの効果を得るための正式な手順
ルーン魔術では、正しい効果を得るためには、きちんとした手順で行うことが重要とされています。その手順は八つのステップに分かれています。
最初のステップが「刻印」。ルーン文字の力を得るためには、ルーン文字を何かに刻印して魔力を込める必要があります。
次に「解読」。これはルーン文字の知識や、どのような力を持っているかルーンとその魔力の知識を得て理解するということ。
三つ目のステップは、刻まれたルーンを染める染料と、その意味を理解する「染色」。実はルーン文字にはそれぞれ固有の色があり、文字と色との組み合わせは非常に重要な存在とされています。
四つ目のステップは「施行」。これは正しい魔力を得て、それを実際に行うための条件と方法を理解することを指しています。
五つ目のステップとされているのが「祈願」。これはルーンを司る神々に対する祈りのこと。ただ単に自分の願いを伝えるだけでなく、正しく祈ることが重視されています。
六つ目のステップは「供養」ルーンを司る神々へ生贄を捧げることを意味しています。七つ目のステップとなるのが「送葬」。これは生贄の魂を神へと送る儀式です。
最後のステップとなるのが「破壊」。今あるルーンを破壊し、安全に処理したり無力化する方法を指しています。
これらの八つの要素を満たすことが、正しいルーン魔術の効果を得るための方法とされています。
ただし、現在ではこれらの要素を満たすことができる人々は少なく、ルーン文字はシンボルや占い、護符などに使われることがほとんどだと言われています。
03ルーン文字とケルト神話
このように、ルーン文字と北欧神話は密接な結びつきがあります。
ここで注意したいのが、北欧神話とケルト神話との違い。日本の場合、北欧神話とケルト神話は混同されることがありますが、実際には別の存在です。
3-1ケルト人とケルト神話
ケルト人は、現在のイギリスの民族として知られていますが、歴史的には中央アジアからヨーロッパに移動してきた人々とされています。ケルト人は馬に乗る文化や鉄器などをヨーロッパにもたらした存在で、古代ローマ人からはガリア人と呼ばれていました。
このケルト人は紀元前400年ごろにはフランスを中心とした中部ヨーロッパに広く分布していたと言われています。
ケルト人は独自の宗教観を持っていましたが、その中でも重要なのが樹木崇拝。ケルト人の時代のヨーロッパはほとんどの場所が森林に覆われていました。森林は建物の材料や燃料にもなる薪、木の実を始めとする食料をもたらしてくれる場所。つまり、ケルト人にとって森林は非常に重要な存在でした。そのため、ケルト人の中には森林を信仰の対象とする文化が生まれていきます。ケルト人の中でも宗教的な仕事を司る人々はドルイドと呼ばれ、霊魂や精霊など、人の目には見えない存在と交流を行うことができる人々とされていましたが、このドルイドという言葉も、本来は「樫の木の賢者」という言葉から生まれたものです。
ドルイドは神官や魔術師としての役割を果たしていましたが、「ドルイドの教えることは文字にしてはいけない」というルールがあり、ケルト人は文字という文化を持っていませんでした。
しかし、文化が発達すると同時に文字の必要性は増していくもの。当初は、ギリシア語など近隣の民族の言葉を使用していましたが、やがてアイルランドのケルト人によって「オガム文字」が産みだされます。
オガム文字はルーン文字と同様、日常生活だけでなく、呪術や魔術にも用いられるようになります。また、オガム文字の大きな特徴が、ひとつの文字がひとつの樹木を表しているということ。すでに述べたように、ケルト人は森林を神聖なものとしてとらえていた人々ですが、その思想は文字にも現れています。
やがてラテン語が広まると、オガム文字もルーン文字も使われなくなりますが、現在では魔術的な意味合いの強い文字として知られています。
3-2ゲルマン人とルーン文字
一方、ルーン文字はゲルマン人によって使われていた文字のこと。ゲルマン人は、ヨーロッパの中央あたりに生活していた民族のことで、古代ローマ人が「ゲルマニア」と呼んだ土地に暮らす人々として「ゲルマン人」と名付けられるようになりました。
このゲルマン人が使用していたのがルーン文字。ルーン文字はもともと東ゲルマン語源の「ゴート語」という言語で秘密を表す「ルナ」という言葉が語源となっているとも言われ、ゲルマン民族の言葉の表記に用いられていました。やがて、ルーン文字はゲルマン民族とともに広い範囲で使用されるようになります。
先ほど説明したように、神話によればルーン文字は北欧神話の最高神であるオーディンが自分をいけにえにすることによって手に入れた文字とされていますが、ヨーロッパや北欧を中心に、十三世紀ごろまで使用されたと言われています。
ルーン文字もラテン語の普及によって次第に使われることが少なくなっていきますが、代わりにルーン文字の持っている神秘性や魔術性に注目が集まり、文字としてではなく、魔術のために用いられることが増えていきます。
04まとめ
二十五種類のルーン文字によって様々なインスピレーションやアドバイスを得ることができるルーン占いは現在でも人気の高い占術です。興味のある方は、さらにくわしい知識を学んでみてはいかがでしょうか。
ここで注意したいのが、北欧神話とケルト神話との違い。日本の場合、北欧神話とケルト神話は混同されることがありますが、実際には別の存在です。
3-1ケルト人とケルト神話
ケルト人は、現在のイギリスの民族として知られていますが、歴史的には中央アジアからヨーロッパに移動してきた人々とされています。ケルト人は馬に乗る文化や鉄器などをヨーロッパにもたらした存在で、古代ローマ人からはガリア人と呼ばれていました。
このケルト人は紀元前400年ごろにはフランスを中心とした中部ヨーロッパに広く分布していたと言われています。
ケルト人は独自の宗教観を持っていましたが、その中でも重要なのが樹木崇拝。ケルト人の時代のヨーロッパはほとんどの場所が森林に覆われていました。森林は建物の材料や燃料にもなる薪、木の実を始めとする食料をもたらしてくれる場所。つまり、ケルト人にとって森林は非常に重要な存在でした。そのため、ケルト人の中には森林を信仰の対象とする文化が生まれていきます。ケルト人の中でも宗教的な仕事を司る人々はドルイドと呼ばれ、霊魂や精霊など、人の目には見えない存在と交流を行うことができる人々とされていましたが、このドルイドという言葉も、本来は「樫の木の賢者」という言葉から生まれたものです。
ドルイドは神官や魔術師としての役割を果たしていましたが、「ドルイドの教えることは文字にしてはいけない」というルールがあり、ケルト人は文字という文化を持っていませんでした。
しかし、文化が発達すると同時に文字の必要性は増していくもの。当初は、ギリシア語など近隣の民族の言葉を使用していましたが、やがてアイルランドのケルト人によって「オガム文字」が産みだされます。
オガム文字はルーン文字と同様、日常生活だけでなく、呪術や魔術にも用いられるようになります。また、オガム文字の大きな特徴が、ひとつの文字がひとつの樹木を表しているということ。すでに述べたように、ケルト人は森林を神聖なものとしてとらえていた人々ですが、その思想は文字にも現れています。
やがてラテン語が広まると、オガム文字もルーン文字も使われなくなりますが、現在では魔術的な意味合いの強い文字として知られています。
3-2ゲルマン人とルーン文字
一方、ルーン文字はゲルマン人によって使われていた文字のこと。ゲルマン人は、ヨーロッパの中央あたりに生活していた民族のことで、古代ローマ人が「ゲルマニア」と呼んだ土地に暮らす人々として「ゲルマン人」と名付けられるようになりました。
このゲルマン人が使用していたのがルーン文字。ルーン文字はもともと東ゲルマン語源の「ゴート語」という言語で秘密を表す「ルナ」という言葉が語源となっているとも言われ、ゲルマン民族の言葉の表記に用いられていました。やがて、ルーン文字はゲルマン民族とともに広い範囲で使用されるようになります。
先ほど説明したように、神話によればルーン文字は北欧神話の最高神であるオーディンが自分をいけにえにすることによって手に入れた文字とされていますが、ヨーロッパや北欧を中心に、十三世紀ごろまで使用されたと言われています。
ルーン文字もラテン語の普及によって次第に使われることが少なくなっていきますが、代わりにルーン文字の持っている神秘性や魔術性に注目が集まり、文字としてではなく、魔術のために用いられることが増えていきます。