薬膳の基本知識と考え方
古来より人々の健康を支えてきた薬膳。単なる料理ではなく、食材の薬効を活かした伝統的な食養生法として、現代でも注目を集めています。
薬膳の魅力は、体の内側から美しく健康になれる点にあります。
しかし、いざ実践しようとすると「何から始めればいいのかわからない」「難しいイメージがある」と感じてしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、薬膳の基本的な考え方から、具体的な食材の選び方、そして日々の食事に取り入れるための基礎知識まで、わかりやすく解説していきます。
薬膳の奥深さを理解し、あなたも食生活に取り入れて、健康的な毎日を手に入れましょう。
薬膳は健康に良い、ヘルシーというイメージがある反面、難しそう、美味しくなさそうと考えている人も少なくありません。しかし、薬膳は基本的な知識さえ知っていれば簡単に美味しく日常の食事に取り入れることができます。今回は薬膳の基本的な知識と考え方についてご紹介します。
- 目次
- 1. 薬膳の定義と特徴
- 1-1. 薬膳とは何か
- 1-2. 伝統医学に基づく調理法
- 1-3. 予防医学としての役割
- 2. 中国の伝統医学の基本倫理
- 2-1. 陰陽と五行
- 2-2. 経絡と臓器の関係
- 2-3. 体質と症状の捉え方
- 3. 陰陽五行説の基本
- 3-1. 陰陽
- 3-2. 五行
- 4. 薬膳における陰陽五行
- 4-1. 食材の性質
- 4-2. 調理法と五行
- 4-3. 季節と五行
- 5. 主な中薬の特性と効能
- 5-1. 代表的な中薬の種類と性質
- 5-2. 各中薬の主な効能
- 6. 薬膳の基本知識
- 6-1. 薬膳をつくる基本は、体の声を聞くこと
- 7. 薬膳をつくる基本
- 7-1. 栄養価の高い旬な食材を活かすこと
- 7-2. 冷えたら温める、熱があれば冷やす
- 8. 薬膳に用いられる陰陽五行説の考え
- 8-1. 「熱」「温」「平」「涼」「寒」の5つに分類した「五性(ごせい)」
- 8-2. 「酸」「苦」「甘」「辛」「鹹(かん)=塩辛い」の5つの味覚からなる「五味(ごみ)」
- 8-3. 「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の5つの「五臓(ごぞう)」
- 8-4. 「春」「夏」「梅雨」「秋」「冬」の5つの「季節」
- 9. まとめ
01薬膳の定義と特徴
薬膳の定義と特徴については以下の通りです。
● 薬膳とは何か
● 伝統医学に基づく調理法
● 予防医学としての役割
上記を順番に解説いたしますね。
1-1薬膳とは何か
薬膳とは、古来より人々の健康を支えてきた、食材の薬効を活かした伝統的な食文化です。
東洋医学の考え方である陰陽五行説や気血津液論に基づき、食材をその性質で分類し、組み合わせることで、体の状態や季節、そして個人の体質に合わせた食事を追求します。
例えば、体を温める効果のある生姜や、血行を促進する効果のあるニンニクなど、食材の持つ力を意識して組み合わせることで、心身両面の調和を図り、より健康的な状態へと導くことを目指します。薬膳は、単に食事を楽しむだけでなく、食を通して心身を癒す、奥深い食文化といえるでしょう。
1-2伝統医学に基づく調理法
伝統医学に基づく調理法は、単に食材を調理するだけでなく、その薬効を最大限に引き出し、体のバランスを整えることを目的としています。
例えば、東洋医学では食材を「陰」と「陽」に分類し、「陰」の性質を持つ食材は体を冷やす効果、「陽」の性質を持つ食材は体を温める効果があるとされています。この考えに基づき、冷えやすい体質の人は体を温める食材を、消化器が弱い人は消化しやすい食材を選ぶなど、個人の体質に合わせた調理法が大切です。
また、食材の組み合わせにも工夫が凝らされています。例えば、体を温める生姜と、血行を促進するニンニクを組み合わせることで、冷え性や血行不良の改善に役立つと言われています。このように、伝統医学に基づいた調理法は、食材の薬効を最大限に活かし、健康的な食生活をサポートする役割を担っています。
1-3予防医学としての役割
薬膳は、単に病気の治療ではなく、病気にならないための予防医学としての役割も担っています。東洋医学では、病気は体のバランスが崩れた状態であると考えられています。薬膳は、食材の薬効を活かして体のバランスを整え、病気になりにくい体作りをサポートします。
例えば、免疫力を高める食材を積極的に摂取することで、風邪などの感染症を予防することができます。また、消化機能を改善する食材を摂ることで、胃腸の健康を維持し、消化不良による体調不良を防ぐことも可能です。
薬膳は、日々の食生活に取り入れることで、体の内側から健康を維持し、病気のリスクを減らす効果が期待できます。現代社会では、ストレスや不規則な生活など、様々な要因によって体のバランスが崩れがちです。薬膳は、食を通して心身両面のバランスを整え、健康的な生活を送るための有効な手段といえるでしょう。
02中国の伝統医学の基本倫理
● 陰陽と五行
● 経絡と臓器の関係
● 体質と症状の捉え方
上記を順番に解説いたします。
2-1 陰陽と五行
陰陽と五行は、東洋医学の根幹をなす考え方です。陰陽は、自然界や人間の体の中に存在する、互いに相反する二つの力です。陰は冷たく、静止し、受容的な性質を持ち、陽は熱く、活動的で、積極的な性質を持ちます。昼と夜、男性と女性、太陽と月など、自然界のあらゆるものが陰陽のバランスによって成り立っているのです。
五行は、木、火、土、金、水の五つの要素を指し、自然界や人間の体の様々な現象を説明します。五行はそれぞれが相互に関係し合い、生成と抑制の関係を持っています。例えば、木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生じます。また、木は土を抑制し、土は水を抑制し、水は火を抑制し、火は金を抑制し、金は木を抑制します。
陰陽五行の考え方は、薬膳においても重要な役割を果たします。食材の性質を陰陽と五行で分類し、体の状態や季節、そして個人の体質に合わせた食材を組み合わせることで、体のバランスを整え、健康を維持することができると考えられています。
2-2経絡と臓器の関係
経絡は、東洋医学でいう体の表面を流れるエネルギーの通り道です。目に見えませんが、各臓器と密接に関係し、生命活動を維持する重要な役割を担っています。
例えば、肺経は肺と繋がり、呼吸機能や皮膚の健康を司ります。心臓経は心臓と繋がり、血液循環や精神状態に影響を与えます。このように、それぞれの経絡は特定の臓器と結びつき、エネルギーの供給や情報の伝達を行っています。
経絡のエネルギーの流れが滞ると、関連する臓器の機能が低下し、病気や不調につながると考えられています。鍼灸や漢方では、経絡のエネルギーの流れを調整することで、臓器の機能を高め、健康を維持することを目指しているのです。
2-3体質と症状の捉え方
東洋医学では、体質は生まれ持った性質と、生活習慣や環境によって変化する後天的な要素が組み合わさって形成されると考えられています。
体質は、大きく分けて「冷え性」「虚弱体質」「湿気体質」などがあります。冷え性の人は、手足が冷えやすく、消化器も弱く、下痢や便秘を起こしやすい傾向があります。虚弱体質の人は、体力や免疫力が低く、疲れやすく、病気にかかりやすい傾向があります。湿気体質の人は、むくみやすく、消化不良を起こしやすく、だるさを感じやすい傾向があります。
症状は、体質と密接に関係しているのです。例えば、冷え性の人は、冷えによって血行が悪くなり、肩こりや腰痛、生理痛などの症状が出やすくなります。虚弱体質の人は、体力不足によって、疲れやすさや免疫力の低下、風邪を引きやすいなどの症状が出やすくなります。湿気体質の人は、湿気が体に溜まりやすいため、むくみや消化不良、だるさなどの症状が出やすくなります。
東洋医学では、体質と症状の関係を理解することで、より効果的な治療を行うことができます。体質に合わせた食事療法や生活習慣の改善、鍼灸や漢方などの治療法を用いることで、症状の改善や健康の維持を目指します。
03陰陽五行説の基本
陰陽五行説の基本は以下の通りです。
● 陰陽
● 五行
上記を詳しく解説しますね。
3-1陰陽
陰陽は、互いに相反する二つの力であり、自然界や人間の体の中に常に存在し、相互に作用し合ってバランスを保っています。
陰: 冷たい、暗い、静止、女性、夜、水、内側など、受容的な性質を持つ
陽: 暑い、明るい、運動、男性、昼、火、外側など、積極的な性質を持つ
陰陽は、単に反対の概念ではなく、互いに補完し合い、調和することで生命活動を維持しています。例えば、昼と夜は陰陽の関係であり、昼は陽気で活動的、夜は陰気で休息的です。
東洋医学では、陰陽のバランスが崩れることで、様々な病気や不調が起こると考えられています。例えば、冷え性や消化不良は、陰の気が過剰になっている状態、逆に、発熱や炎症は、陽の気が過剰になっている状態と考えられます。
3-2五行
五行説は、宇宙万物を木・火・土・金・水の5つの要素に分類する思想です。五行は互いに生成(木→火→土→金→水→木)し、抑制(木→金、火→水、土→木、金→火、水→土)する関係にあります。
五行は自然現象や人体の臓器、季節、気候、方位、色彩など、様々なものに対応づけられています。例えば、
木は春、肝臓、胆嚢、緑色に対応
火は夏、心臓、小腸、赤色に対応
土は長夏、脾臓、胃、黄色に対応
金は秋、肺臓、大腸、白色に対応
水は冬、腎臓、膀胱、黒色に対応
このように、五行は宇宙と人体を有機的に結びつける重要な概念なのです。
陰陽五行説は、東洋医学の様々な分野で応用され、病気の原因や症状を理解し、治療法を選択する際に重要な役割を果たしています。
04薬膳における陰陽五行
薬膳における陰陽五行は以下の通りです。
● 食材の性質
● 調理法と五行
● 季節と五行
上記を順番に解説いたします。
4-1食材の性質
陰陽
● 陽性: 温める効果があり、体を活発にする作用を持つ。
例: 生姜、ネギ、ニンニク、唐辛子、羊肉、鶏肉、牛肉、ゴマ、シナモン、クローブなど
● 陰性: 冷やす効果があり、体を鎮める作用を持つ。
例: キュウリ、トマト、レタス、豆腐、バナナ、梨、スイカ、海藻、キノコなど
五行
● 木: 肝臓、胆嚢に良い影響を与える。
例: 大根、ネギ、パセリ、春菊、レタス、ブロッコリー、タケノコなど
● 火: 心臓、小腸に良い影響を与える。
例: トマト、ナス、ピーマン、唐辛子、ショウガ、ニンニク、鶏肉、羊肉など
● 土: 脾臓、胃に良い影響を与える。
例: じゃがいも、さつまいも、栗、山芋、蓮根、きのこ、米、麦など
● 金: 肺、大腸に良い影響を与える。
例: 梨、白菜、大根、きのこ、豆腐、白米、蕎麦など
● 水: 腎臓、膀胱に良い影響を与える。
例: 黒豆、黒米、海苔、昆布、わかめ、黒ごま、黒砂糖など
食材の性質は、その色や味、形、産地、季節などによっても判断されます。
● 色: 赤色は陽性で、血行促進や体を温める効果がある。緑色は陰性で、解毒や鎮静作用がある。
● 味: 辛味は陽性で、体を温め、発汗作用がある。苦味は陰性で、解毒や鎮静作用がある。
● 形: 丸い形は陽性で、消化を助ける。尖った形は陰性で、解毒や鎮静作用がある。
● 産地: 南方の食材は陽性で、温める効果がある。北方の食材は陰性で、冷やす効果がある。
● 季節: 春は陽気が上昇し、木気が旺盛。夏は陽気が最も盛ん。秋は陰気が増し、金気が旺盛。冬は陰気が最も盛ん。
薬膳では、これらの食材の性質を考慮し、体質や季節、体調に合わせて食事を調整することで、健康を維持し、病気の予防や改善に役立てると考えられています。
4-2調理法と五行
薬膳では、食材の性質だけでなく、調理法も五行の考え方と密接に関係しています。五行とは、木・火・土・金・水の5つの要素で、それぞれが持つ性質と相互作用が、食材や調理法に影響を与えるとされています。
例えば、木は成長を象徴するため、炒め物や揚げ物は食材のエネルギーを引き出し、活発にする効果があります。火は燃焼を象徴するため、焼くや煮込むことで、食材のエネルギーを凝縮し、温める効果があります。このように、五行の考え方を取り入れることで、より効果的に食材の力を引き出し、健康に役立てることができますよ。
4-3季節と五行
五行は季節にも対応しているため、季節に合わせた食材選びや調理法を意識することも重要です。
春(木)
● 特徴: 万物が芽吹き、成長を始める季節。木の性質は、成長、発展、上昇。
● 食材: 青菜、若芽、若魚など、生命力に満ち溢れた食材がおすすめです。
● 例: 春菊、たけのこ、菜の花、ふきのとう、あさり、たけのこ、新玉ねぎ
● 調理法: 炒め物、和え物など、食材のエネルギーを引き出し、活発にする調理法が適しています。
● 効果: 春の疲れを癒し、体のエネルギーを高める効果が期待できます。
夏(火)
● 特徴: 太陽のエネルギーが最も強くなる季節。火の性質は、燃焼、変容、熱。
● 食材: 赤色野菜、冷たい料理など、体を冷やす効果のある食材がおすすめです。
● 例: トマト、スイカ、ナス、ピーマン、冷奴、そうめん
● 調理法: 冷やし物、さっぱりとした味付けなど、体の熱を冷ます調理法が適しています。
● 効果: 夏バテを防ぎ、体の熱を冷ます効果が期待できます。
長夏(土)
● 特徴: 夏の終わりから秋の始まりにかけての時期。土の性質は、安定、調和、消化。
● 食材: 穀物、根菜など、消化吸収を助ける食材がおすすめです。
● 例: トウモロコシ、じゃがいも、さつまいも、きゅうり、冬瓜
● 調理法: 蒸し物、煮物など、食材の栄養をじっくりと引き出し、消化吸収を助ける調理法が適しています。
● 効果: 夏の疲れを癒し、体のバランスを整える効果が期待できます。
秋(金)
● 特徴: 収穫の季節。金の性質は、収縮、乾燥、成熟。
● 食材: 白色野菜、乾燥食品など、体を潤す効果のある食材がおすすめです。
● 例: 白菜、大根、きのこ、栗、柿、干し柿、梨
● 調理法: 乾燥、煮込みなど、食材の水分を飛ばし、保存性を高める調理法が適しています。
● 効果: 秋の乾燥を防ぎ、体の潤いを保つ効果が期待できます。
冬(水)
● 特徴: 万物が休眠する季節。水の性質は、流動、静寂、収縮。
● 食材: 海藻、きのこ、肉類など、体を温める効果のある食材がおすすめです。
● 例: 昆布、わかめ、しいたけ、えのき、牛肉、豚肉、鶏肉
● 調理法: 鍋物、煮込みなど、体を温める調理法が適しています。
● 効果: 冬の寒さから体を守り、体の温め効果が期待できます。
季節の移り変わりに合わせて食材を変えることで、その時々に必要な養分を得ることができます。五行の考え方を参考に、季節の食材を積極的に取り入れてみましょう。
05主な中薬の特性と効能
● 代表的な中薬の種類と性質
● 各中薬の主な効能
上記を詳しく解説いたしますね。
5-1代表的な中薬の種類と性質
中薬は、その性質によって大きく10種類に分類されます。
1. 気を補う薬: 人参(ニンジン)、黄芪(オウギ)など。気力を高め、体力増強、疲労回復に効果があります。
2. 血を補う薬: 当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)など。血液を補い、血行を促進し、貧血や生理不順に効果があります。
3.気を下げる薬: 茯苓(ブクリョウ)、麦門冬(バクモンドウ)など。心を落ち着かせ、不眠やイライラに効果があります。
4. 血を冷やす薬: 丹参(タンサン)、赤芍薬(セキシャクヤク)など。熱を冷まし、血行を調整し、発熱や炎症に効果があります。
5. 気を巡らせる薬: 陳皮(チンピ)、香附子(コウブシ)など。気を巡らせ、消化不良や食欲不振に効果があります。
6. 血を巡らせる薬: 桃仁(トウニン)、紅花(コウカ)など。血行を促進し、瘀血(おけつ)の改善に効果があります。
7. 水を利かす薬: 茯苓(ブクリョウ)、猪苓(チョレイ)など。体内の余分な水分を排泄し、むくみや浮腫に効果があります。
8.湿気を取る薬: 蒼朮(ソウジュツ)、厚朴(コウボク)など。体内の湿気を除去し、食欲不振や消化不良に効果があります。
9.寒気を止める薬: 桂枝(ケイシ)、肉桂(ニッケイ)など。体を温め、冷え性や腹痛に効果があります。
10. 熱を冷ます薬: 石膏(セッコウ)、知母(チモ)など。体の熱を冷まし、発熱や炎症に効果があります。
これらの性質を理解することで、自分の体質や症状に合った中薬を選ぶことができます。
5-2各中薬の主な効能
中薬は、その性質によって様々な効能を持ち、様々な症状に効果を発揮します。
気を補う薬: 人参(ニンジン)、黄芪(オウギ)は、体力増強、疲労回復、免疫力向上に効果があります。
血を補う薬: 当帰(トウキ)は、貧血、生理不順、冷え性改善に効果があります。川芎(センキュウ)は、血行促進、頭痛、めまいに効果があります。
気を下げる薬: 茯苓(ブクリョウ)は、不眠、不安、イライラ、むくみに効果があります。麦門冬(バクモンドウ)は、のどの渇き、咳、痰に効果があります。
血を冷やす薬: 丹参(タンサン)は、血行促進、痛み、しびれに効果があります。赤芍薬(セキシャクヤク)は、生理痛、更年期障害に効果があります。
気を巡らせる薬: 陳皮(チンピ)は、消化不良、食欲不振、胸やけに効果があります。香附子(コウブシ)は、胃痛、腹痛、消化不良に効果があります。
血を巡らせる薬: 桃仁(トウニン)は、瘀血(おけつ)の改善、血行促進、生理痛に効果があります。紅花(コウカ)は、血行促進、痛み、しびれに効果があります。
水を利かす薬: 茯苓(ブクリョウ)は、むくみ、浮腫、排尿困難に効果があります。猪苓(チョレイ)は、排尿困難、頻尿に効果があります。
湿気を取る薬: 蒼朮(ソウジュツ)は、食欲不振、消化不良、むくみに効果があります。厚朴(コウボク)は、消化不良、胸やけ、腹痛に効果があります。
寒気を止める薬: 桂枝(ケイシ)は、冷え性、手足の冷え、風邪に効果があります。肉桂(ニッケイ)は、冷え性、腹痛、下痢に効果があります。
熱を冷ます薬: 石膏(セッコウ)は、発熱、のぼせ、口渇に効果があります。知母(チモ)は、のどの渇き、発熱、口内炎に効果があります。
01薬膳の基本知識
薬膳は、病気から身体を守り、健康な身体を作るための食事です。では、薬膳はどのような考えを基本としているのでしょうか
・中国の伝統医学である「中国医薬学(中医学)」の理論がベース
薬膳のベースとなっているのは「中国医薬学(中医学)」の理論です。中医学は中国の伝統的な医療技術で、その考え方は病気を治すことだけでなく、病気にならない身体づくりを行い、人間が本来持っている治癒力を高めることを基本としています。
薬膳は、以前は「食養生」と呼ばれていましたが、この食養生とは、食を通じて身体をいたわるということ。つまり、その人の体質や体調、季節に合った食材をうまく取り入れることで、身体を整えていこうというのが薬膳の考え方です。
1-1薬膳をつくる基本は、体の声を聞くこと
人間の体質は人によって異なります。また、季節や天気などによっても大きく左右されるもの。西洋医学を基本とする栄養学では、食材の中の栄養素に注目しますが、薬膳は人間の身体の声を聞くことを基本としています。
個人の体質や体調、季節、天気、その時の気分などをしっかりと観察して、それに合った食材を適切に組み合わせて提供し、それによって身体を元気な状態に導くことが薬膳の基本となります。
02薬膳をつくる基本
薬膳は作るのが難しそうと思う人も多いかと思いますが、実際には基本的な知識さえあれば、誰でも簡単に食生活に取り入れることが可能です。
薬膳を作るためには、いくつかのポイントがあります。
2-1栄養価の高い旬な食材を活かすこと
まず、薬膳料理の基本となるのが、旬の食材を使用することです。旬の食材は非常に栄養価が高いため、健康のためには非常に役立つもの。しかも旬の食材は、その季節に身体が必要としている効果を含んでいます。
たとえば夏の野菜は身体を冷やし、冬の野菜は身体を温める、春の食材は冬の間に溜まった老廃物を排出するといったように、季節の食材をしっかり取り入れることで、身体の状態を整え、病気になりにくい体質へと導いてくれます。
2-2冷えたら温める、熱があれば冷やす
薬膳の考え方の基本のひとつに「医食同源」というものがあります。これは食べ物と薬はもともとは同じものであるという意味。
西洋医学では、熱が出たときには解熱剤を服用しますが、それを食べ物で行うのが薬膳です。身体が冷えたら温める食材を、熱がこもっていれば身体を冷やす食材を摂取することで、身体をできるだけ平均的な状態に戻すことが薬膳の基本となります。そのほかにも、足りないものがあれば補い、多すぎるものがあればそれを排出するといったように、食材の特徴を利用して、それを効果的に組み合わせることが薬膳では重要です。
・中国の伝統医学である「中国医薬学(中医学)」の理論がベース
薬膳のベースとなっているのは「中国医薬学(中医学)」の理論です。中医学は中国の伝統的な医療技術で、その考え方は病気を治すことだけでなく、病気にならない身体づくりを行い、人間が本来持っている治癒力を高めることを基本としています。
薬膳は、以前は「食養生」と呼ばれていましたが、この食養生とは、食を通じて身体をいたわるということ。つまり、その人の体質や体調、季節に合った食材をうまく取り入れることで、身体を整えていこうというのが薬膳の考え方です。
1-1薬膳をつくる基本は、体の声を聞くこと
人間の体質は人によって異なります。また、季節や天気などによっても大きく左右されるもの。西洋医学を基本とする栄養学では、食材の中の栄養素に注目しますが、薬膳は人間の身体の声を聞くことを基本としています。
個人の体質や体調、季節、天気、その時の気分などをしっかりと観察して、それに合った食材を適切に組み合わせて提供し、それによって身体を元気な状態に導くことが薬膳の基本となります。
薬膳を作るためには、いくつかのポイントがあります。
2-1栄養価の高い旬な食材を活かすこと
まず、薬膳料理の基本となるのが、旬の食材を使用することです。旬の食材は非常に栄養価が高いため、健康のためには非常に役立つもの。しかも旬の食材は、その季節に身体が必要としている効果を含んでいます。
たとえば夏の野菜は身体を冷やし、冬の野菜は身体を温める、春の食材は冬の間に溜まった老廃物を排出するといったように、季節の食材をしっかり取り入れることで、身体の状態を整え、病気になりにくい体質へと導いてくれます。
2-2冷えたら温める、熱があれば冷やす
薬膳の考え方の基本のひとつに「医食同源」というものがあります。これは食べ物と薬はもともとは同じものであるという意味。
西洋医学では、熱が出たときには解熱剤を服用しますが、それを食べ物で行うのが薬膳です。身体が冷えたら温める食材を、熱がこもっていれば身体を冷やす食材を摂取することで、身体をできるだけ平均的な状態に戻すことが薬膳の基本となります。そのほかにも、足りないものがあれば補い、多すぎるものがあればそれを排出するといったように、食材の特徴を利用して、それを効果的に組み合わせることが薬膳では重要です。
03薬膳に用いられる陰陽五行説の考え
薬膳では、食材の特徴を利用することが重要ですが、そのときに知っておきたいのが「陰陽五行説」という考え方です。
陰陽五行説は、「陰陽」「五行」という二つによって成り立っています。
陰陽は、物事が持っている二つの性質のこと。「陽」は明るく、温かく、軽く、乾燥しているもの。「陰」は暗く、冷たく、重く、湿っているものを指しています。
これは朝になれば太陽が昇り、夜になれば沈むという自然の移り変わりから生まれた考え方で、薬膳では人間の身体や食材にも陰と陽の側面があるととらえます。
このように説明すると、陽が良くて陰が悪いととらえる方もいますが、実は薬膳では、身体が陰陽どちらかに傾くというのは、身体のバランスが崩れていると考えます。
身体が陰に傾きすぎると、冷え性や疲労感などが生まれますが、逆に陽に傾きすぎると、身体が火照る、肌が乾燥するといったトラブルが生まれます。それを防ぐために、身体が陰に傾いているときには陽の食材を、陽に傾いているときに陰の食材をといったように、バランスよく食材を摂取することが重要になります。
一方、薬膳では陰陽の他に五行という考え方も重視します。
五行とは、自然界にあるものを「木」「火」「土」「金」「水」五種類に分類したものです。
この分類には食材や季節、味覚、身体の働きなどを特徴や性質に応じて、様々なものがあります。
3-1「熱」「温」「平」「涼」「寒」の5つに分類した「五性(ごせい)」
食材の中には、身体を温めるものや冷やすものといった様々な特徴がありますが、その性質に注目したものが「五性」です。五性の中には、身体を非常に熱くする「熱」、身体を温める「温」、身体を冷やす「涼」、身体を非常に冷たくする「寒」、身体を温めることも冷やすこともない「平」の五種類があります。
薬膳は身体を極端な状態にしないことが基本となるため、摂取する食材は平が中心になります。もし身体が冷えているときには、熱や温、身体が熱くなりすぎている場合には涼や寒といった食材を摂取することで身体のバランスを整えていきます。
3-2「酸」「苦」「甘」「辛」「鹹(かん)=塩辛い」の5つの味覚からなる「五味(ごみ)」
「五味」は人間の味覚を五つに分類したものです。五味には「酸っぱさを表す「酸」、苦味を表す「苦」、甘さを表す「甘」、辛さを表す「辛」、塩辛さを表す「鹹(かん)」があり、それぞれ異なる作用があるとされています。たとえば「酸」は下痢や汗、せきを止めて緊張を和らげますが、取りすぎると食欲を落とし、身体の柔軟性が失われます。「苦」は解熱効果がある反面、身体が冷えて乾燥しやすくなります。「甘」は食欲を増やし、体内の毒を解毒しますが、食べ過ぎると骨が弱く、抜け毛の原因となります。「辛」は気の巡りを活発にして活発に汗を出しますが、神経が高ぶりやすくなります。「鹹」は腫れものや便秘を皆瀬んしますが、血圧を上げて血のめぐりを悪くします。
3-3「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の5つの「五臓(ごぞう)」
薬膳では、人間の体内の働きを「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の「五臓」に分類します。これはいわゆる「肝臓」「心臓」といったものとは異なり、中国の伝統的な考え方に基づいています。
「肝」は血や気の流れをコントロールするもの、「心」は五臓を司るもの、「脾」は消化吸収に対応するもの、「肺」は呼吸機能、「腎」は体内の水分量をコントロールするものです。
これら五臓は五味とも関係していて、「酸」は「肝」、「苦」は「心」、「甘」は「脾」、「辛」は「肺」、「鹹」は「腎」の働きを促進します。
3-4「春」「夏」「梅雨」「秋」「冬」の5つの「季節」
日本では季節は「春夏秋冬」の四つに分けることが一般的ですが、薬膳の世界では季節も「春」「夏」「梅雨」「秋」「冬」の五種類に分けられます。この五つの季節も五行や五味、五臓とそれぞれ対応していて、異なる季節にはその時期に合った食材や味付けのものを摂取して、体内に過不足がなくなるように整えることが重要になります。
04まとめ
薬膳は、食材の薬効を活かして健康を維持・増進する伝統的な食養生法です。単に美味しいだけでなく、体のバランスを整え、心身ともに健康な状態へと導くことを目指します。
薬膳の基礎知識をまとめると以下の通りです。
五行の考え方: 木・火・土・金・水の5つの要素が、食材や体の状態に影響を与えると考えられています。
陰陽の考え方: 陰と陽のバランスが、体の健康を左右すると考えられています。
食材の薬効: 各食材には、それぞれ異なる薬効があるとされています。
季節と食材: 季節の変化に合わせて、体の状態に合った食材を選びましょう。
体質と食材: 自分の体質に合った食材を選ぶことが重要です。
薬膳は、難しいものではなく、日々の食生活に取り入れやすいものです。食材の薬効を意識して、美味しく健康的な食生活を送りましょう。非常に難しいように思える薬膳の世界ですが、実は非常にきちんとしたルールに基づいています。そのため、基本さえ覚えてしまえば簡単に応用することができるもの。もし興味を持ったという方は、さらに詳しく薬膳について学んでみてはいかがでしょうか。
陰陽五行説は、「陰陽」「五行」という二つによって成り立っています。
陰陽は、物事が持っている二つの性質のこと。「陽」は明るく、温かく、軽く、乾燥しているもの。「陰」は暗く、冷たく、重く、湿っているものを指しています。
これは朝になれば太陽が昇り、夜になれば沈むという自然の移り変わりから生まれた考え方で、薬膳では人間の身体や食材にも陰と陽の側面があるととらえます。
このように説明すると、陽が良くて陰が悪いととらえる方もいますが、実は薬膳では、身体が陰陽どちらかに傾くというのは、身体のバランスが崩れていると考えます。
身体が陰に傾きすぎると、冷え性や疲労感などが生まれますが、逆に陽に傾きすぎると、身体が火照る、肌が乾燥するといったトラブルが生まれます。それを防ぐために、身体が陰に傾いているときには陽の食材を、陽に傾いているときに陰の食材をといったように、バランスよく食材を摂取することが重要になります。
一方、薬膳では陰陽の他に五行という考え方も重視します。
五行とは、自然界にあるものを「木」「火」「土」「金」「水」五種類に分類したものです。
この分類には食材や季節、味覚、身体の働きなどを特徴や性質に応じて、様々なものがあります。
3-1「熱」「温」「平」「涼」「寒」の5つに分類した「五性(ごせい)」
食材の中には、身体を温めるものや冷やすものといった様々な特徴がありますが、その性質に注目したものが「五性」です。五性の中には、身体を非常に熱くする「熱」、身体を温める「温」、身体を冷やす「涼」、身体を非常に冷たくする「寒」、身体を温めることも冷やすこともない「平」の五種類があります。
薬膳は身体を極端な状態にしないことが基本となるため、摂取する食材は平が中心になります。もし身体が冷えているときには、熱や温、身体が熱くなりすぎている場合には涼や寒といった食材を摂取することで身体のバランスを整えていきます。
3-2「酸」「苦」「甘」「辛」「鹹(かん)=塩辛い」の5つの味覚からなる「五味(ごみ)」
「五味」は人間の味覚を五つに分類したものです。五味には「酸っぱさを表す「酸」、苦味を表す「苦」、甘さを表す「甘」、辛さを表す「辛」、塩辛さを表す「鹹(かん)」があり、それぞれ異なる作用があるとされています。たとえば「酸」は下痢や汗、せきを止めて緊張を和らげますが、取りすぎると食欲を落とし、身体の柔軟性が失われます。「苦」は解熱効果がある反面、身体が冷えて乾燥しやすくなります。「甘」は食欲を増やし、体内の毒を解毒しますが、食べ過ぎると骨が弱く、抜け毛の原因となります。「辛」は気の巡りを活発にして活発に汗を出しますが、神経が高ぶりやすくなります。「鹹」は腫れものや便秘を皆瀬んしますが、血圧を上げて血のめぐりを悪くします。
3-3「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の5つの「五臓(ごぞう)」
薬膳では、人間の体内の働きを「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の「五臓」に分類します。これはいわゆる「肝臓」「心臓」といったものとは異なり、中国の伝統的な考え方に基づいています。
「肝」は血や気の流れをコントロールするもの、「心」は五臓を司るもの、「脾」は消化吸収に対応するもの、「肺」は呼吸機能、「腎」は体内の水分量をコントロールするものです。
これら五臓は五味とも関係していて、「酸」は「肝」、「苦」は「心」、「甘」は「脾」、「辛」は「肺」、「鹹」は「腎」の働きを促進します。
3-4「春」「夏」「梅雨」「秋」「冬」の5つの「季節」
日本では季節は「春夏秋冬」の四つに分けることが一般的ですが、薬膳の世界では季節も「春」「夏」「梅雨」「秋」「冬」の五種類に分けられます。この五つの季節も五行や五味、五臓とそれぞれ対応していて、異なる季節にはその時期に合った食材や味付けのものを摂取して、体内に過不足がなくなるように整えることが重要になります。
薬膳の基礎知識をまとめると以下の通りです。
五行の考え方: 木・火・土・金・水の5つの要素が、食材や体の状態に影響を与えると考えられています。
陰陽の考え方: 陰と陽のバランスが、体の健康を左右すると考えられています。
食材の薬効: 各食材には、それぞれ異なる薬効があるとされています。
季節と食材: 季節の変化に合わせて、体の状態に合った食材を選びましょう。
体質と食材: 自分の体質に合った食材を選ぶことが重要です。
薬膳は、難しいものではなく、日々の食生活に取り入れやすいものです。食材の薬効を意識して、美味しく健康的な食生活を送りましょう。非常に難しいように思える薬膳の世界ですが、実は非常にきちんとしたルールに基づいています。そのため、基本さえ覚えてしまえば簡単に応用することができるもの。もし興味を持ったという方は、さらに詳しく薬膳について学んでみてはいかがでしょうか。